「リード数」だけを追うと何が起きるか——BtoBマーケティング予算配分に潜む偏り

BtoBマーケティングの現場では、「リード獲得数」が最も扱いやすいKPIとして重視される傾向にあります。施策の実行から結果までの時間が短く、マーケティング部門の努力でコントロールしやすい指標だからです。しかし、リードの件数や獲得単価だけを見ていては、顧客が実際に比較・検討し、購入を決められる状態になっているかどうかは分かりません。
くるみバディが公開した「日本のBtoBマーケティング 2026–2027」という資料は、この構造的な課題を指摘しています。部門ごとに短期的なKPI(リード数)を追いかけると、すぐに連絡先を獲得できる施策へ予算が偏り、認知形成や比較検討・社内承認を支える工程への投資が後回しになりやすいという指摘です。
なぜ「リード数」への偏りが起きるのか
BtoBの購買プロセスは、認知→比較検討→社内承認→購買という複数の段階を経るのが一般的です。このうち「リード獲得」に直結しやすいのは、ウェビナーや広告、ホワイトペーパーのダウンロードフォームといった、比較的短期間で成果が見えやすい施策です。
一方で、認知形成やブランドへの信頼構築、社内の複数の意思決定者を納得させるための比較検討コンテンツは、効果が出るまでに時間がかかります。評価サイクルが四半期や単年度で区切られている組織では、こうした「時間のかかる投資」よりも「すぐに数字が出る施策」が優先されやすくなります。結果として、予算配分がリード獲得施策に偏り、ファネルの上流・中流が手薄になるという構造が生まれます。
架空の年間予算配分例から考える
同資料では、年間1億円の配分例(架空の計画)を用いて、予算の考え方を具体的に示しています。こうした例示が有効なのは、抽象的な「バランスを取るべき」という指摘だけでは、実際の予算会議で説得力を持たせにくいためです。認知形成・比較検討支援・リード獲得・商談化支援といった各工程に、どの程度の比重で予算を配分するかを数字で示すことで、部門間の合意形成がしやすくなります。
同様の構造は、コンテンツマーケティングの内製化を進める企業にもあてはまります。内製化によって記事やホワイトペーパーの量産体制は整っても、「どの工程にどれだけの比重を割くか」という設計を見直さなければ、結局は短期で成果が見えやすいコンテンツばかりが量産され、比較検討層に向けた深い内容のコンテンツが不足する、という同じ偏りを内製チーム自身が再生産してしまう可能性があります。
内製化の次に来る課題
直近は「内製化の実態」や「AI検索対策の実施率」といった調査が多く公開されていますが、くるみバディの資料は少し異なる切り口です。コンテンツマーケティングを内製化した企業が、量産体制を確立した後に直面しやすい「量産しても成果が読みにくい」という次の課題に接続する内容だと捉えられます。
内製体制を作る目的は、記事やコンテンツを安定的に作り続けられるようにすることにありますが、その先には「何を・どの工程に向けて作るか」という設計の問題が残ります。リード獲得に直結するコンテンツだけを量産していないか、認知形成や比較検討支援のコンテンツにも一定の比重を割いているか——予算配分の偏りという視点は、内製化後のコンテンツ戦略を見直す際の有効な観点のひとつになります。
関連して、「リード数至上主義」からの転換——BtoBマーケ調査が示す自社コンテンツ投資の最多化や、BtoBリードの「質」評価、マーケと営業はなぜ食い違うのか——商談化率「未測定」が最多という実態といった調査も、同じ構造的な課題を別の角度から示しています。
まとめ
リード獲得数という短期的なKPIだけを追いかけると、認知形成や比較検討支援といった、効果が見えにくいがファネル全体を支える工程への投資が後回しになりやすいという構造的な偏りが生まれます。くるみバディの資料は、この偏りを架空の年間予算配分例という具体的な形で可視化し、部門間の合意形成に使える視点を提供しています。コンテンツマーケティングの内製化が進む中で、「量産体制」の先にある「配分設計」をどう考えるかは、多くの企業にとって次の論点になりそうです。&.CONTENTのINSIGHTフェーズでも、こうした施策設計の上流にある構造課題の把握は重要な観点のひとつとして位置づけています。
編集後記
予算配分の話は、どうしても「増やす・減らす」という単純な議論になりがちですが、今回の資料が示すのは「どの工程に回すか」という配分の設計そのものに目を向ける視点でした。社内でリード数の報告だけが独り歩きしていないか、一度振り返ってみる価値があるように思います。