HubSpot「2026年版マーケティング調査」に見る、AI時代に問われる『ブランドの視点』

米国のマーケティングプラットフォーム企業HubSpotが公開した2026年版の調査レポートでは、1,500人超のマーケターへの調査を通じて、AI活用が広がる中での新しい競争軸が示されています。キーワードは「ブランド独自の視点(POV)」と「Loop Marketing」です。生成AIの普及によってコンテンツ制作のハードルが下がった今、何が差別化要因になっているのかを見ていきます。
AIによるコンテンツ量産が「均質化」という新しい課題を生んでいる
同調査では、多くのマーケターがAIによって以前より多くのコンテンツを制作できるようになったと回答している一方で、半数以上が「AI飽和状態の市場で自社のコンテンツを目立たせること」に苦戦していると答えています。
これは直感的にも理解しやすい構造です。生成AIは文章制作の速度と量を飛躍的に高めますが、同じようなツール・同じような学習データを使う限り、アウトプットの語り口や構成は似通いやすくなります。結果として、市場に流れるコンテンツの「量」は増えても、読み手が「これは他とは違う」と感じる情報の「密度」は薄まりやすいという逆説が生まれます。
ブランドの「POV(視点)」こそが差別化の核になるという指摘
こうした状況を受けて、同レポートは「ブランドが何を信じ、誰のために存在し、競合が言わないことをあえて言う姿勢を持てるかどうか」が2026年の競争を左右すると位置づけています。多くのマーケターが、ブランド独自の視点の重要性がかつてないほど高まっていると回答したことも紹介されています。
これは、AIが「効率的に量産する」役割を担う一方で、「何を、どんな立場から語るか」という編集判断は依然として人間の仕事であり続けることを示唆しています。AIが生成した文章をそのまま公開するのではなく、自社の実務知見や一次情報を土台にした視点を明確に持たせることで、初めてコンテンツが「その企業らしさ」を帯びるという整理です。この点は、AI記事は「編集なし」で成果が出るのかという論点とも重なります。
「Loop Marketing」という4段階の考え方
同レポートではあわせて、AI時代の成長サイクルを表す枠組みとして「Loop Marketing」という考え方も紹介されています。人間の創造性とAIの実行効率を組み合わせ、認知から購買、そして既存顧客の再活性化までを循環的に捉える発想です。単発のキャンペーンで完結させるのではなく、顧客との関係を継続的なループとして設計する視点は、コンテンツ資産を積み上げていく運用と親和性が高いと言えそうです。
&.CONTENTが向き合う論点との重なり
この調査結果は、コンテンツ運用を内製化しようとする企業が直面しやすい課題ともつながっています。AIを使えば記事の生産量を増やすこと自体は難しくありません。しかし、量産した記事が没個性なテンプレートの羅列になってしまえば、読み手にも検索エンジンにも埋もれてしまいます。
&.CONTENTがINSIGHT(自社の知見の言語化)からCREATION(AIを活用した執筆支援)へとつなげる設計を重視しているのも、こうした背景と地続きです。AIに「迷わず書ける設計図」を与える工程には、その企業ならではの一次情報や実務上の判断基準を事前に組み込む必要があります。「AIで作った」だけでは差がつかない、という論点にもあるように、AIの実行力と、人間が持つ独自の視点をどう両立させるかは、海外の大規模調査でも改めて焦点化されているテーマだと言えるでしょう。
まとめ
HubSpotの2026年版調査は、AIによるコンテンツ量産が一般化する中で、ブランド独自の視点(POV)と一次情報に基づく編集判断がむしろ重みを増していることを示しています。コンテンツ運用の内製化を進める企業にとっても、「何を自動化し、何を自社の視点として残すか」の線引きを意識することが、これからの差別化につながっていきそうです。
編集後記
海外の大規模調査を追っていると、「AIで量を増やす」段階から「AIをどう使いこなして質と独自性を保つか」という段階に議論が移っている様子がうかがえます。アンパサンド編集部としても、日々の記事制作の中でこの視点の使い分けを意識していきたいと感じています。