新規事業の現場、生成AI「ほぼ毎日」利用は役職が上がるほど増加——2万人調査が示す実態

新規事業の現場で生成AIを使いこなしているのは、若手なのか、それとも意思決定を担う層なのか。株式会社ARCHECOが実施した2万人規模の調査は、この問いに対して直感とは異なる答えを示しています。
新規事業の現場で進む生成AI活用の格差
同調査は全国の会社員・経営者/役員2万人を対象に実施され、そのうち直近3年以内に新規事業の企画・推進に関わった4,794人の回答を分析したものです。生成AIを新規事業の業務で「ほぼ毎日」利用すると答えた人は全体で33.6%、週1回以上の利用まで含めると66.4%にのぼります。新規事業という不確実性の高い領域において、生成AIはすでに一部の先進的な担当者だけのツールではなく、実務の土台になりつつあることがうかがえます。
「若手ほど使う」という想定が崩れる実態
注目すべきは、利用頻度が役職とともに一貫して上昇する点です。週1回以上の利用率は、一般社員55.4%から係長・主任61.2%、課長71.3%、部長クラス75.7%へと段階的に高まっていきます。デジタルツールは若手層から広がるという一般的な想定とは逆に、新規事業の現場では役職が上がるほど生成AIとの距離が近くなっているのです。責任者として新規事業に関わった層に限ると、「ほぼ毎日」利用する割合は48.9%に達し、ほぼ2人に1人が生成AIを日常の道具として使いこなしている計算になります。
この逆説の背景には、新規事業特有の事情があると考えられます。市場調査・事業計画の壁打ち・資料作成・意思決定の根拠整理など、責任者が担う業務は範囲が広く、かつ短時間での判断が求められます。生成AIを「時間を作るための手段」として取り込む動機は、現場の実務者よりもむしろ意思決定者側に強く働いているのかもしれません。
唯一の例外——経営者・役員層に見える利用率の反転
役職が上がるほど利用率が高まるという傾向には、一つだけ例外があります。経営者・役員クラスの週1回以上の利用率は58.6%と、部長クラスの75.7%から一転して低下するのです。これは経営者・役員が生成AIに消極的というよりも、意思決定の最終責任を負う立場では利用状況の分散が大きい(積極的に使いこなす層と、意思決定プロセスの性質上あまり使わない層に分かれる)ためと見るのが自然でしょう。役職と利用率の関係は単純な右肩上がりではなく、意思決定の性質によって変化する構造を持っているといえます。
コンテンツ運用体制への示唆
この実態は、コンテンツマーケティングの制作体制を設計するうえでも無視できない示唆を含んでいます。従来、生成AIの導入検討は現場の実務者やライターを起点に語られがちでしたが、実際には新規事業の責任者層こそが日常的に生成AIを使いこなしているとすれば、企画段階から責任者自身がAIを使う前提で編集フローを組み立てる方が実態に即しているはずです。承認や方向性確認のプロセスに時間がかかる企業ほど、責任者の使い方と現場の使い方の間にギャップが生まれやすく、それが編集体制のボトルネックになりかねません。
&.CONTENT のような制作支援ツールを検討する際も、まず現場でどの役職の担当者がどの程度AIを使いこなしているかという実態把握(INSIGHT)から始めることで、誰にどんな機能が必要かの見立てがぶれにくくなります。役職ごとの利用実態を前提にせず内製化の仕組みを設計してしまうと、せっかく整えた編集フローが一部の層にしかフィットしないという事態も起こり得るでしょう。
まとめ
ARCHECOの2万人調査は、新規事業の現場における生成AI活用が「若手主導」ではなく「責任者主導」で進んでいる実態を明らかにしました。一般社員55.4%から部長クラス75.7%まで役職とともに利用率が高まる一方、経営者・役員層だけは58.6%へと反転するという、単純な右肩上がりでは説明しきれない構造も見えてきます。コンテンツ運用や編集体制を仕組み化する際は、こうした役職別の利用実態を出発点に据えることが、机上の設計と現場の実態のズレを防ぐ手がかりになりそうです。
編集後記
「若手ほどAIを使いこなす」というイメージを持っていた編集部にとって、今回の調査結果は率直に意外なものでした。数字を追いながら、自社の編集フローも「誰が実際にAIを使っているか」を前提に組み立てられているだろうかと、あらためて問い直すきっかけになりました。